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暮らしと健康
獣医師執筆記事

伴侶動物とコロナウイルス

皆様こんにちは
1月も終わりが近づいています。COVID19の猛威は再び世界中を包み込みつつありますね。大きな被害に及ばず、オミクロン株の流行が早くピークアウトして全世界的なCOVID19収束を願うばかりです。新型コロナ窩とはそろそろお別れをして来年か再来年には新しい世界で一歩を踏み出せることを心から願います。

さて、前回伴侶動物は人の伴侶でありその感染症も熟知されているとお伝えしました。私達伴侶動物医療の世界での犬と猫のコロナウイルスとの付き合いには、実はとても長い歴史があります。もちろん今、パンデミックを起こしている人のCOVID19とは異なるものです。

犬とコロナウイルス


犬には犬コロナウイルスとその感染症があります。稀にではありますが、免疫の弱い子犬や集団の生活でストレスを受けた犬が、感染犬の糞便に出てくる犬コロナウイルスを経口的に取り入れることで感染し、軽い嘔吐や下痢などの消化器症状を示すことがあります。
単独の感染では命に関わるほどの症状を呈する事は滅多にありませんが、犬パルボウイルス(感染症)との合併感染で重症化する場合もあります。通常、成犬はウイルスを持っていても無症状であることが多く、子犬時代に感染したとしても大きな問題にならないまま成犬になる場合が多いようです。
予防としては、犬コロナウイルス感染症のある場所で感染犬と触れ合わせないことが一番です。ワクチンがあるため接種することも1つの方法ですが、ワクチン接種する頃にはすでに抗体をもっている場合の方が多いかも知れません。

猫とコロナウイルス

猫コロナウイルスは、病原性のない腸コロナウイルスがほとんどを占め,国内の猫のウイルス保有率は5〜8割とも言われるほど、腸にコロナウイルスをもっている猫はとても多いと考えられています。しかし、ウイルスを持っていても、通常は何も起こらずに生涯健康に過ごす猫がほとんどです。
ただし、この猫コロナウイルスは猫の腸管の中で変異を起こし、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスという高い病原性を持つウイルスになります。おそらく突然変異は高頻度で起こっているのでしょうが、通常は免疫のしっかりしている猫、高度のストレスを受けていない猫では何も起こりません。しかし、ごくわずか、過密な集団生活で重度のストレスを受けた猫、あるいは免疫機能に異常がある猫(猫免疫不全ウイルスや猫白血病ウイルスに感染しているなど)で、FIP(猫伝染性腹膜炎)という激しい病気が起こることがあります。
FIPはウイルスそのもので起こるのではなく、ウイルスに対する猫の異常な免疫反応といったもう一つの免疫異常が重なって救命率の高い重篤な病気となります。

猫における検査方法と治療について

猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスが体内にいるかどうかを調べるには腹水やリンパ節材料などによるPCR検査があります。また、猫コロナウイルス全般に感染しているかどうかを知るための血液を用いた抗体検査、あるいは腸コロナウイルスが糞便中にいるかどうかを調べるPCR検査もあります。
FIPは主として若い猫と高齢の猫の病気として知られています。治療は困難を極めますが、米国のギリアドサイエンシス社が開発し、カリフォルニア大学DAVIS校のピーダーソン博士が実験で確認した薬剤が唯一治療効果のあるものとして存在します。これは、現在人間のCOVID-19の治療に使われているレムデシビルの関連物質ですが、動物用薬剤は市販されていません。
猫コロナウイルス陰性の猫ではFIPは起こらないので、自身の伴侶である猫がコロナウイルス陽性かどうかは知っておくことは良い情報であると思われます。動物病院で調べてもらえます。

最後に

犬と猫においてもCOVID-19への感染が確認されており、実際に呼吸器症状などを示す動物もいるようですが、現時点で犬と猫が人の感染拡大に関与しているという事はないようです。
今回の様なパンデミック下に限らず犬と猫と親しく暮らし、惜しみない愛情を注ぐことは尊いことです。しかし、動物の口腔内には雑菌も多くいるため、口移しの食事などの度を超えた濃厚接触は避けることがお互いに長く健康に美しく暮らしていくための秘訣の1つではないかと思います。

 


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