人と動物の絆を護る「狂犬病ワクチン」
5月も半ばを過ぎ、本当に美しい緑の季節になりました。「風薫る」とはよく表現されたもので、木々の緑が青空に良く映え、植物や少し湿った土の良い香りのする風が心地よく吹く日々となりました。梅の花を楽しませてくれた木にはすでに青梅が実っています。梅仕事をして梅酒やシロップを作るのも良いですね。
狂犬病の予防接種はお済ですか?
さて、皆様は狂犬病の予防接種はすでに済ませていらっしゃいますか?
狂犬病ワクチンは毎年必ず犬たちに接種する義務があります。その接種期間は通常4-6月の間となっています。この義務は狂犬病予防法に管理されていて厚生労働省の管轄です。動物への接種を通じて人間を護るための法律です。犬には生涯に一度の登録の義務と毎年の射済み証を鑑札と共に犬のリードや首輪につけて携帯する義務があります。 91日齢以上の犬と暮らす家族は、犬と暮らし出して30日以内に市区町村に登録をして鑑札の交付を受けて狂犬病の接種をしなくてはならないことになっています。(違法になりますと罰金対象です。)
致死率ほぼ100%の狂犬病
狂犬病は大変恐ろしい病気で、すべての哺乳類に感染します。発症までには1-3ヵ月と言われますが、時に年単位で時間経過した後に発症する場合もあります。発症してしまうとほぼ100%死亡すると言われている感染症です。症状も非常に過酷なもので発症してしまうと有効な治療法がないとされています。世界では年間5万人以上がこの病気で亡くなっています。私も教育講座で発症例の犬と人両方の動画を見たことがありますが、いずれも目を覆いたくなるものでした。本当に恐ろしい病気ですので基本的に家族の犬たちは毎年予防接種を受ける事が重要です。
日本では1956年を最後に国内感染でこの病気で亡くなった方は出ていません。動物では1957年の猫の発症例以降は出ていません。日本はありがたいことに世界では数少ない「狂犬病の清浄国」の1つなのです。島国であることも大きな要因であるといえます。現時点で狂犬病清浄とされる国と地域は日本の他にはオーストラリア、ニュージーランド、イギリス、アイルランド、フィジー諸島、キプロス、ハワイ、グアム、ノルウェー、アイスランドの11カ所だけとされています。日本はこれらの貴重な地域の1つなのです。そのため、海外から日本に入国するときの動物の検疫は厳しいのです。
検疫所のホームページ
海外での狂犬病
日本の周囲、近隣諸国には狂犬病は存在しています。皆さんが今後海外旅行に行かれる場合、たとえ先進国であっても野生動物などには絶対に気軽に触ってはいけません。可愛らしいリスでも鳥でも草食動物でも人の管理下にない動物には絶対に触らないということをしっかり覚えていて下さい。(管理下の場合は管理者に必ず許可を得ることが鉄則です。)
万が一の対処法
狂犬病への感染予防法としては人間もあらかじめ狂犬病のワクチンを接種しておくことです。万が一ワクチン未接種で狂犬病の可能性のある動物に噛まれた、または傷のある/あるかもしれない皮膚を舐められた場合、その部位の徹底した水洗いと曝露後ワクチンやグロブリン療法などの対処法があります。
しかし、発症を食い止められるかどうか、感染しているかどうかを明確に知る方法はありません。
ワクチン接種時の確認事項
伴侶動物に狂犬病ワクチン接種を行う時には、全てのその他のワクチン接種時と同様に先んじて診察をして体調などを確認し、接種可能かどうか判断してから接種してもらうようにしてください。接種後の数十分は要観察とし、数日は常に体調に気を付けて過ごすようにしましょう。それまで何も症状がなくてもワクチン接種後の副反応は現れる場合があります。
また、何らかの疾患を持ち、ワクチン接種がその動物にデメリットを及ぼす危険があることを主治医である獣医師が判断した場合は「希に」狂犬病猶予証明を発行する場合もあります。しかし、これは容易に発行できるものではなく、十分に獣医師が検討した上での判断となります。
基本的にはお話したような恐ろしい病気の侵入や流行を抑えるために、狂犬病ワクチンの接種を毎年行うようにしていきましょう。
柴内晶子先生が執筆された
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