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獣医師執筆記事

動物介在活動 アニマルセラピーについて

朝の温度が10度以下の日も出てきましたね。先日は朝からローライトで湿度もあるけれど底冷えのする、とても寒い体感の日でした。空は白く日が暮れるのもあっという間で、冬の訪れを実感しました。
今までたくさんのトピックスを綴らせていただきましたが、もうすぐ12月です。今回から動物が介在した活動(一般的にはアニマルセラピー)についてお伝えいたします。

アニマルセラピー(アニマルアシステッドセラピー)

日本では初めての動物介在活動が1986年からスタートしています。
私が初めて動物介在活動に参加したのは学生時代でした。活動は現在の公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)のCAPP活動でした。(※JAHA: Japanese Animal Hospital Association, CAPP: Companion Animal Partnership Program

私たち赤坂動物病院は、現在この活動に参加し、活動推進をしています。
36年前、JAHAは当時の厚生省の老人福祉課から1省1団体の認可を受けて活動をスタートしました。当時は私の母の柴内裕子獣医師がこの回の会長の時代でした。動物が介在することで人間に良い効果があると国が認めて、主として高齢者施設での活動をサポートするようになった大きなターニングポイントの時代でした。当時は母もその時のお仲間の先生方も厚生省に日参して情熱的に活動したそうです。先達の皆様のおかげで今の活動が継続していると思うと感謝に絶えません。

活動(AAA)の風景(撮影:ジャーナリスト大塚敦子)

その頃から2万回を超える活動が行われ、全国で98の活動チームが動物介在活動を支えています。2019年以降は新型コロナウイルス感染症のパンデミックで今までのような活動を休止していましたが、オンラインや窓越しで行ったりと様々な試みがなされてきました。最近やっと、協会が定めるガイドラインに則って活動が徐々に再開されています。

この30年余の間に世間では「アニマルセラピー」という言葉で知られるようになっていますが、これはマスコミの造語で、実際には「アニマルアシステッドセラピー」が正しい言葉です。つまり、動物が介在する療法という意味ですね。

アニマルアシステッドセラピーの種類

この活動にはいくつか種類があります。

アニマルアニマルアシステッドセラピー

AAA: Animal assisted activity         動物介在活動

AAE: Animal assisted education  動物介在教育

AAT: Animal assisted therapy   動物介在療法

主としてこの3つのカテゴリーに分かれます。略語はどれも英語の頭文字をとったものです。

これらの活動は、獣医師、ボランティアさん、(一般の方々)、伴侶動物医療関係者などが、実際にこうした活動に適性のある犬や猫を筆頭とした動物を連れて、施設を訪れて触れ合いなどの活動を行います。

AAA(動物介在活動)

人と動物のふれあいによって参加者の情緒の安定やクオリティーオブライフ(QOL)向上などを目的とします。

AAE(動物介在教育)

子どもたちを対象にした教育プログラムで、学校などを訪問し、生命の大切さ、動物との正しい挨拶の仕方などを伝え心身健全な人間育成を目指したものです。最近人気なのは、文字離れ防止、読書離れ対策にもなる「読書プログラム」で、犬にお子さんが本を読み聞かせます。1回の活動にそこまで時間はないのですが、何冊も抱えて参加されるお子さんもいます。

AAE読書プログラムの風景(柴内裕子とトイプードルのシロマ)

AAE読書プログラムの風景(柴内裕子とトイプードルのシロマ)

AAT(動物介在療法)

人間の医療現場で医療行為として医師の介入のもとに行われるものです。個々の患者の状態を把握した医師がこの活動を処方するようなイメージで、療法前後の評価も成されます。日本では、2003年に聖路加国際病院の小児科病棟で行われたのを皮切りに広まっています。初めのきっかけを作ってくださった松藤凡先生(聖路加国際病院前副院長)は今もサポーティブに活動してくださっています。感染症対策チームなど、小児科病棟に動物たちとボランティアを受け入れてくださる時の努力と実現までには並々ならぬ御尽力があったと思います。

この他に、最近では法廷で子供の心を支えるコートハウスドッグ(courthousedog)もその貴重性を高く評価されています。犯罪被害者になった子供の証言が必要な場面で、裁判所の雰囲気の中、証言は困難を極めるであろうことは皆様も想像に難くないと思います。そのような中で、優しい犬が寄り添うことでリラックス効果が得られ、話を始めることができる場合があるのです。人と動物の関わりは心の底から溢れるような思い、遺伝子にすりこまれた絆で繋がっているような気がします。

最後に

今回は、CAPP活動について、アニマルアシステッドセラピーの種類についてお話ししました。少しでも皆様に興味を持っていただけたら嬉しいです。
次回はこうした活動の現場のことをお話ししたいと思います。

現在の犬と猫事情や病気のこと、さまざまな急な場面での対処などについて12月初旬まで私の所属するJBVPフォーラム年次大会が配信中です。一般の方々は無料視聴が可能ですので、よろしければ是非ご覧ください。


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