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暮らしと健康

犬猫とのコミュニケーション

はじめに

人と犬・猫は長い歴史の中で絆を深め、現在では家族の一員として、ともに暮らすようになりました。
今回の記事では、ペットとのふれあいとその効用、さらに絆を深めるさまざまな関わり方についてお話しします。

動物とのふれあいとその効用

アニマルセラピーについて

アニマルセラピーとは、動物とのふれあいによって人の心に癒しを与えることです。
ストレス解消になるだけではなく、認知症やうつ病などの症状改善も期待できるとして、医療や福祉などさまざまな分野で取り入れられています。
例えば、動物と一緒にいる人は血圧や呼吸数、心拍数が安定するというような報告や、ペットの飼い主は通院回数が少なく、医療費も少ない傾向にあるともされています。
そのほかにも、ペットと暮らしている人の方が心臓発作から1年後の生存率が高い、0歳から1歳までの間に犬がいる家庭で育った子どもは、7歳になった時点でぜんそくを発症する可能性が13%低いなど、研究によって多くの実例が挙げられています。

そんなアニマルセラピーには3つの種類があります。

動物介在療法(AAT:Animal Assisted Therapy)
動物介在療法は、治療の補助療法として用いられるものです。治療過程において、医療や福祉の専門家が明確な治療目標を設定したうえで、動物を用い、対象者(患者)の治療や改善の経過を記録しながら行うもの。

動物介在活動(AAA:Animal Assisted Activity)
動物介在活動は、具体的な治療目的を持たず、子供や高齢者、病気や障害を持つ人を対象にして、生活の質を向上させる目的で、動物を介在させて行われるレクリエーション的な活動。いわゆる動物ふれあい活動なども含まれます。

動物介在教育(AAE:Animal Assisted Education)
動物介在教育は、小学校などの教育現場に動物と訪問して行う活動です。年に一度のふれあい教室のようにイベント的傾向の強いもの、学校における動物飼育、あるいは、生活科や総合学習、理科や道徳といった授業の一環として実施するものもあります。

 

動物の感情表現

アニマルセラピーは人間側の都合だけでなく動物側にも寄り添った実施が必要です。言葉を話さない犬猫の感情表現にはどのようなものがあるのでしょうか。

言葉を話さない動物は皆、体の動きやしぐさで感情を表現します。これを「ボディランゲージ」といいます。
すべての動物に共通するのが、威嚇と恐怖のボディランゲージです。威嚇で脅そうとするときは、体を大きく見せ「それ以上近寄ると攻撃するぞ」、恐怖を感じているときは、自分を小さく見せ「こんな弱いものを攻撃しないで」というメッセージを送ります。
これらは命を守るために必須のサインであり、犬猫ともにボディランゲージとしてよく見られるものです。

動物のなかでも哺乳類は、鋭い嗅覚を備え、匂いから多くの情報を読み取ります。体臭や肛門のうからの分泌液、尿などがその媒体です。
そのため、初めて会った犬同士は、互いの鼻、耳、お尻のニオイを嗅ぎ合います。これらのニオイを嗅ぐことで、「自分の仲間かどうか」「オスかメスか」「自分より強い個体か」「発情中かどうか」などを理解し、安心するのです。散歩の中で電信柱などに尿をかけるのも、自分のニオイの情報を残すためです。
 鳴き声も、重要なコミュニケーションツールです。遠くの仲間を呼ぶとき、交配相手を呼ぶとき、威嚇するときなど、目的と状況によって鳴き声を使い分けます。

犬の感情表現

犬は表情でも感情を伝え合っています。とくにはっきり表れるものが攻撃心と恐怖心で、耳の位置や口の開き方、鼻の上のしわの寄り方などに表れます。
犬の感情を読み取るうえでは、尾の状態も重要です。恐怖、不安、喜び、リラックスなど、すべての感情、状態が現れるため、表情とあわせて観察します。

犬と関わるうえでもうひとつ知っておきたいのが、日常的に見られる6種のボディランゲージです。
体高、尾の位置や高さ、表情などの組み合わせからなり、喜びや恐怖、攻撃などの感情を全身で表します。
なお、おなかを見せるボディランゲージの意味は、状況によって異なります。
よその犬に対して体を硬くしてお腹を見せている場合は、「降参」を意味します。一方、体をリラックスさせて飼い主にお腹を見せるのは、「なでて」というサインです。このように、筋肉の緊張状態と併せて総合的に判断する必要があります。

また、ボディランゲージとは別に、相手や自分の緊張を緩和させるためのしぐさとして、「カーミング・シグナル」があります。
あくびをする、目線を逸らす、地面のニオイを嗅ぐなどのさりげない仕草ですが、犬にストレスがかかっているかどうかの目安となります。

 

猫の感情表現

猫は本来、犬とは異なり単独で暮らす動物です。そのためコミュニケーションの主目的は、よその猫を排除し、自分のなわばりを守ることと言えます。

代表的なものは、ニオイによるアピールです。なわばり内のさまざまな場所に頬やあごをこすりつけ、臭腺から出る自分のニオイを残します。自分にとっては「安心できる場所」を意味し、よその猫に対しては「進入禁止」のメッセージを伝えます。
 一方、よその猫が侵入してきたときや、発情期に自分のなわばりから出てしまった時などは立ったまま後ろに尿を飛ばす「スプレー」という方法をとります。これは不安を感じたときなどにとる行動で、特有の強烈なニオイが残り、自分のなわばりを主張したり欲情中のメスを引き付けたりするサインとなります。

野生の猫に特有のなわばり主張法もあります。巣の近くの木などで爪をとぎ、その跡を残すのです。体を伸ばして高い位置で爪をとげば「大きい猫だ」と相手に思わせることができます。爪とぎは気分が高揚したときにとる行動なので、エネルギッシュであることも伝わります。「元気な先住猫がいるよ」というメッセージを伝えることにより、よその猫が侵入してくるのを防いでいるのです。

攻撃や恐怖を表すボディランゲージは、基本的に犬と同様です。
相手を威嚇するときは、体を大きく見せようとしするため、耳をピンと立てて前方に傾け、背中の毛を逆立て、背中を持ち上げます。尾もピンと立てて、毛を膨らませます。
恐怖を感じたときは、逆に全身を極力小さく見せます。尾は両足の間に巻き込み、頭も体も低くしてうずくまります。

母猫や同腹のきょうだい猫とは、子別れの日が来るまで生活をともにします。この間に行う子猫特有のコミュニケーションがあり、室内飼育の猫では、おとなになってもよく見られます。たとえば、のどを鳴らすのは安心のサイン。尾をピンと立て、子猫のような声で近づいてくるのは、飼い主に甘えたいサインです。
なお、飼い主の手に突然咬みつくこともあります。これは1頭で飼われている猫に多い行動で、飼い主をきょうだい猫とみなし、遊びに誘っているのです。抵抗したり叱るなどの反応をすると「遊んでいいよ」のサインと誤解されるので、叱らずに遊んであげるのが正しい対処法です。

最後に

言葉を話さない犬猫にとっては表情、体で感情表現することはとても大切です。
言葉が通じないからこそ、犬猫の感じていること、伝えようとしていることを精一杯感じ取りたいですよね。本記事を読んで犬猫が感じていることを少しでも理解する手助けになれば嬉しいです。

次回は犬猫とコミュニケーションについて詳しくお話しします。

 


参考図書

山根義久、イヌ・ネコ 家庭動物の医学大百科 改訂版、パイ インターナショナル/図書印刷株式会社、2012年11月10日

東海林克彦、犬と猫との暮らしの教科書、公益社団法人日本愛玩動物協会、2019年9月1日

東海林克彦、愛玩動物飼養管理士<2級 第2巻> 2021(令和3)年度<第41期>、公益社団法人日本愛玩動物協会、2021年4月1日

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