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暮らしと健康
獣医師執筆記事

日本人が猫と暮らしてきた歴史

人と動物の絆~Human Animal Bond

こちらのコラムリリースの日は2022年2月22日と2の多い日ということで、多くのCAT LOVERがにゃんにゃんにゃんの日と盛り上がっているのではないでしょうか。
私も猫と暮らして云十年です。職業柄もありますが、CAT LOVERでもあり、DOG LOVERでもあります。幼少時から犬も猫もそばにいて、猫には様々な遊びを教わりました。
私の親族には私が知る限り、獣医師が4名います。そのうちの叔父が日本獣医史学会の会長を永年勤めさせて頂いていましたが、あるとき、「日本の犬の歴史は私が書いているから猫の歴史を調べてみなさい」と提案を受け(半ば指示でしたが…笑)、4年ほど前から日本の猫の歴史を調査執筆し論文投稿しています。今日は2ならびに因んで猫に特化してお話してみようと思います。

日本で暮らす猫 

日本での伴侶動物の頭数は代表格である犬がその筆頭でしたが、2017年からは家族と暮らす猫が犬を上回る数となりました。(日本ペットフード協会調べ)猫には登録義務がないので実際はもっと多い可能性があります。

現代において我々と共に暮らすイエネコの祖先は、中東で生息していたリビア山猫であると言われています。すらっとした美しい肢体を持つ猫で、イエネコの祖先説は遺伝子的にも証明されています。
日本で土着の猫は、野生の山猫としては2種類いて、いずれも有名な長崎県対馬のツシマヤマネコと沖縄県西表島のイリオモテヤマネコです。それぞれ生息頭数の少ないその土地の固有種で今は手厚く保護されています。
ツシマヤマネコは2万年ほど前、ウルム氷期に大陸から渡ってきたと言われています。イリオモテヤマネコの生息はそれ以前ではないか?という説もありますが、よくわかっていません。イリオモテヤマネコは1960年代になってからの遅い発見となり、当時センセーショナルなニュースとなったそうです。

【イリオモテヤマネコ】

私は西表島の発見捕獲の地の札のある船浮集落に幾度か行きました(実際はそのような地が何カ所かにあるそうです)。しかし、この土着の猫たちとイエネコは異なる系統の猫で、イエネコが日本に渡来したのはこの2種の猫の生息の初めよりずっと遅い時代と言われています。

海を越えてやってきた猫とその歴史

日本のイエネコは、中国から奈良時代頃に輸入された貴重な仏教経典を鼠害から守るために船に乗せられてやってきたとされています。
しかし、姫路市の見野古墳群(古墳時代6-7世紀)で出土された須恵器の杯身(つきみ)と言われる蓋付き食器に大変可愛い猫の痕跡が発見されています。器が焼かれる前の乾燥工程で文字通り猫が踏んだ足跡:「肉球足型」がくっきりと残っているのです。この頃から人の傍らには猫がいたのかもしれません。なんとも猫らしいエピソードです。

見野古墳群から出土【足跡のある須恵器】

猫は海外から渡来した貴重な動物で、当時は珍重され貴族など特権階級の屋敷内で大切にされていたようです。
皆さんは現存の日本最古の猫の絵をご存知でしょうか?
平安時代末期に描かれた信貴山縁起絵巻(しぎさんえんぎえまき)の中では、猫が座敷の奥の間にいる姿が描かれているのに対し、同じ絵の中では屋外の犬たちが追い払われており、対照的です。(奈良国立博物館蔵)当時の猫はそのような存在だったのです。
その猫が市中に放たれて生きるようになったのは江戸幕府が開かれる前年1602年に徳川家康により発布された「猫の放し飼い令」によるようです。市中の鼠害への対策と猫があまりに高額で売買される事への対策などから行われたと言われています。

日本最古の猫の絵 信貴山縁起絵巻

【信貴山縁起絵巻に描かれた猫と犬】

猫との長い歴史の中、日本で最古の猫との暮らし日記も発見されています。その内容は漆黒のつやつやとした美しい猫の様子を細かな部分まで描写したもので当時の大変高級な食物であった乳粥(にゅうがゆ)を与えていたと書かれています。
さて、作者はどのような方でしょうか?
日記は「寛平御記」で、作者は第59代宇多天皇です。宇多天皇ご自身が猫に語りかけるご様子なども描写されています。令和の天皇家でも伴侶動物達が愛されて暮らしていますが、遙か67代前の天皇家で漆黒の猫が愛され、話しかけられていたと思うと猫と日本人との壮大な歴史を感じますね。

 

最後に 

猫と1000年の暮らしのある日本ですが、「放し飼い令」の影響なのか、現代の日本にはまだ外の猫がいます。多くは短命で、屋外での生活は交通事故や感染症の伝播、人との間に事件があれば猫は悪者になってしまいがちです。
当院では60年近く前から家族のいない動物の譲渡のお手伝いをしてきましたが、最近、保護犬猫の譲渡活動がやっと日の目を見るようになってきたと感じます。保護の動物には様々な事情があり、性格的な問題なども含めて難しい部分もありますので一概には言えませんが、人と動物が共に暮らすきっかけとして旅は道連れ…のような縁を感じて生活を共にすることがあっても良いと思います。

もう30年以上のお付き合いの千代田区にある(社)ちよだニャンとなる会さんの2つめの譲渡型保護猫カフェが2022222日オープンしましたので御紹介致します。
機会がありましたらお立ち寄り下さい。
詳細はこちらから。

猫の問題・課題は、行政が中心となって獣医師・ボランティアが連携・協力して取り組むのが人と動物の双方の福祉の向上につながると考えます。(代表:香取章子さんより)


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