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暮らしと健康

妊娠と出産

 はじめに

ペットの出産はペット自身にも飼い主にもとても喜ばしいことです。
しかしながら、出産とはリスクが多くあり、最悪の場合死亡に至るケースもあります。
もしペットの出産を望む場合は、ペットの妊娠、出産についてよく理解したうえで、計画的に行いましょう。

 飼い主としての責任

出産をする動物が疾患を持っていたり、性格に問題がある場合は、出産できたとしても緊急時に対処することが困難となります。
その他にも、生まれてきた子と親が幸せに生活していくことができる環境が整っているかなども重要になってきます。
様々なリスクを理解したうえで、繁殖をさせるべきなのか飼い主として責任を持って決断をしましょう。

繁殖させるべきではないイヌ・ネコの例

子に遺伝する遺伝子疾患を持っている

伝染する可能性のある病気を持っている
子に感染する寄生中が寄生しているメス

持病を持っているメス:子に影響がある可能性があるため薬などを使用することができない、また出産時のトラブルに対処できない場合があるため
虚弱体質、体力のないメス:出産時のトラブルに対処できない可能性があるため
高齢の初産となるメス:難産になるリスクが高いため
社会化されていないメス:子が生まれても子育てできない、また必要以上に攻撃的になりトラブル時に飼い主が対処できない可能性があるため
難産が多いとされている種:トラブルが起こりやすく、帝王切開を行う可能性もあるため

難産や流産の経験があるメス:難産、流産が続く可能性があるため
新生子血液型不適合の恐れのある雄雌の組み合わせ

 メスの発情周期

 犬 

犬は「単発情型の自然排卵動物」と言われ、1繁殖期に1発情し、交尾の有無にかかわらず排卵されます。
最初の発情(春機発情)は6~24カ月齢(平均9~10ヶ月齢)で、4~12ヶ月(平均7カ月)おきに発情があり、年に2回程度となります。
※個体差あり
  

① 発情前期 :外陰部が腫れ、陰部から血液が混じった分泌物が認められる。

② 発情期  :排卵が起こり、受精が可能となる。
③ 発情休止期:メスが交尾を拒否する。外見上の特徴はない。
④ 無発情期 :妊娠の維持に関わるホルモンの量が低濃度となる。

 猫 

一方猫は「季節性多発情動物」と言われ、1年の内、ある期間だけ繰り返し発情する性周期であり、交尾による刺激によって排卵されます。
野生の場合は、日照時間が短い冬に発情周期が停止しますが、室内飼いの猫の場合は人工光により1年中発情しています。
また、発情が開始される春機発情はおおよそ4~12ヶ月齢(平均6~9カ月齢)となります。

① 発情前期 :外陰部の腫れ、陰部から血液の混じった分泌物が認められる。
        犬と比較して、腫れや分泌物が少ない。
② 発情期  :交尾を許容するようになる。
③ 発情後期 :メスが交尾を拒否する。外見上の特徴はない。
④ 発情停止期:次の発情までの休憩期間。
※猫のメス性周期は個体によりかなり差がある。

 交配

犬、猫共に、縄張り意識を持っている動物であるため、オスのいる場所へメスを連れて行くのが一般的です。
ただし、相性などもあるので、お互いを強く攻撃してないかなどを観察し、危険がある場合には引き離しましょう。

 犬 

犬の精子は4日間ほど受精能力を持っているため、一般的にはメスの発情前期の開始から10~12日目の発情期に1日おき、最低2回以上の交配を行うと良いとされています。

 猫 

猫の排卵は、1日に複数回刺激を受けるとより確実なものとなります。

 妊娠と出産

 妊娠期間 


①食欲、体重が増加
②X線診断が可能
③落ち着きがなくなる

妊娠の診断として、腹部を軽く触診し、1~2cmのふくらみが触知できれば妊娠したと診断ができます。
妊娠が確認されたら過度な運動、入浴を避けましょう。また、栄養価の高いフードに変更し、量および回数を徐々に増やしていきましょう。

 出産前の準備 

・産箱
産箱は静かで落ち着ける場所へ設置します。

・バスタオル、ペットシーツ
・いざという時のための動物病院の調査

親が新生子の処置を行わない場合に備えて

・臍帯を縛る糸およびはさみ
・産湯のための洗面器
・タオル
・ガーゼ

長毛種の場合は、体液で汚れた際にグルーミングができるように、陰部周辺の毛を刈っておくと安心です

 出産 

子供は羊膜に包まれて産まれてきます。
臍帯は親により嚙みちぎられ、胎盤も親が食べます。

犬はおおよそ6時間以内に分娩が終了し、猫は夜間に行われることが多いとされています。

犬猫は本能的に自分のテリトリーで出産をしたい動物です。そのため、基本的には自宅で出産を行いましょう。
しかしながら難産の場合はかかりつけの動物病院へ行きましょう。

難産の例

・破水してから2時間たっても生まれない
・先の子が生まれて3時間たっても次の子が生まれない
・強烈な陣痛がみられるのに生まれてこない
・出血量が異常に多い
・出産中に嘔吐した
・出産中の母親が極端に元気がない
・母親が痙攣をおこした
・生まれた子の様子がおかしい

 産後のケア

分娩後は、陰部から血液混じりの分泌物が5日程排出されます。
この分泌物が長期間続く場合、かかりつけの動物病院へ行きましょう。

出産後、母親は通常新生子を守ろうとする本能から警戒心が強くなります。そのため、必要以上に近づくことは避けましょう。
また、人間が母親や新生子に干渉しすぎることにより、子育て放棄の原因となることもあるため、注意をしましょう。

産後には病気にも注意が必要です。

産後の母親に起こることのある病気の例

・胎盤部位退縮不全
・子宮脱
・胎盤停滞
・低カルシウム血症(産褥テタニー)    等…   

異常がみられた場合にはかかりつけの動物病院へ相談をしましょう。

 最後に

今回は、ペットの妊娠、出産についての解説や注意点などをご紹介しました
ペットの出産は病気やけがの危険があり、命がけの行為です。
また、無事に出産が行えたとしても、産まれた子が幸せに暮らせる環境作りや子供のもらい手探しも必要となってきます。
この記事が「出産が本当に必要なのか」「もし出産する場合には何が必要であるか」ということを考える一助となれば幸いです。
また、広報室では不妊・去勢に関する記事も公開しています。この記事と併せてぜひ読んでみてください!
犬猫の不妊・去勢手術に関する記事はこちら

 

 

参考文献

・武藤修一 .アニマルサイエンスシリーズ ライフステージからみた犬と猫の健康管理 .TBS出版株式会社 ,2008
・東海林克彦 .愛玩動物飼養管理士<2級 第2巻> 2021年度<第41期> .公益社団法人日本愛玩動物協会 ,2021
・山根義久 .改定版イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科 .パイインターナショナル,2012
・東海林克彦 .犬と猫との暮らしの教科書 .公益社団法人日本愛玩動物協会 ,2019

 

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