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暮らしと健康

ワクチンと感染症について

 はじめに

近年、獣医医療の進化や飼い主さんの意識向上などにより、ペットの寿命は延びてきています。一方で、生活の多様化や寿命の延長により、病気も増加傾向にあります。その中で、ペットが健康に過ごすための健康管理は飼い主の義務となっています。
今回は健康管理の中でも、感染症の予防策であるワクチンについてや生活習慣の多様化によって増加傾向にあるペットと人の人獣共通感染症について紹介します。

 免疫とワクチン接種

「自然免疫」と「獲得免疫」

動物の体には、病原体から体を守る免疫という仕組みが働いています。その免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類が存在しています。免疫細胞が病原体を無差別に排除する力を「自然免疫」、過去に体内に侵入したことのある特定の病原体を排除する力を「獲得免疫」と言います。

ワクチン接種

ワンちゃん、ネコちゃんの感染症には、感染すると治療が困難で命に関わる病気が多くあります。感染症の予防策として、「獲得免疫」を取得できるワクチン接種を適切に受けることが大切です。特に生後91日以降のワンちゃんには、年に1回の狂犬病の予防接種が義務付けられています。
その他にも様々なワクチンが存在していますので、かかりつけの獣医師さんとよく相談して、ワンちゃん、ネコちゃんに合った予防接種をしましょう。
また、感染症に対する抗体の少ない幼齢期のワンちゃん、ネコちゃんの予防接種は特に重要です。
赤ちゃんはお母さんの母乳を通して獲得した免疫を持っていますが、8週齢前後で消失します。そのため、7~8週齢で第1回目のワクチンを接種し、病原体に対する免疫を獲得させることが大切なのです。

感染症から体を守るために欠かせないワクチンですが、接種後は気を付けなければならないこともあります。

ワクチン接種後の注意事項

►免疫を獲得する2~3週間後までは他の動物に接近させない、屋外へ連れ出さないなどの対策を取り、感染リスクを減らすようにしましょう
►接種後1~2日は熱が出たり、注射した部分を痛がったりして元気が無くなることがあります
►接種した日は激しい運動やシャンプーを控えましょう
►稀にアナフィラキシーショックを起こすことがあるため、異常を感じた場合は動物病院へ連絡をしましょう

 人と動物の共通感染症

感染症の中には、動物から人へ、人から動物へと感染する「人獣共通感染症」というものがあります。WHO(世界保健機構)によると、世界には約800種、日本国内でペットに関わりの深いものだと約60種類の人獣共通感染症があるとされています。

感染経路

特に近年は、交通網の発達による今まで日本になかった共通感染症の発生やペットの室内飼育増加から過度な接触によるペットから人への感染増加などが危険視されつつあります。
それらの感染症の病原体が動物から人へ感染する経路は主に3つあります。

①経気道感染

飛沫や空気を介し、呼吸器からの病原体が侵入する感染です。感染動物のくしゃみなどの飛沫から感染する「飛沫感染」と空気中に漂う病原体を吸い込んで感染する「空気感染」があります。

②経口感染
病原体を含んだ水や食べ物など、病原体に触れた手を介して口から病原体が侵入する感染です。

③接触感染
皮膚および粘膜の接触や血液等の体液を介することで病原体が侵入する感染です。感染動物に噛まれるなどで傷口から直接病原体が侵入する「直接接触感染」と病原体が付着した物に触れることで感染する「間接接触感染」があります。

感染予防

人獣共通感染症を予防するには、「ペットへの感染予防」と「人への感染予防」があります。飼い主さんとペットの双方において感染を予防するためには、正しい情報を持つことが重要です。 

ペットへの感染予防

人獣共通感染症を予防するためには、まずペットが感染症にかからないことが大切です。
飼育環境を衛生的に保ち、他の感染症動物との接触を避けましょう。また、前半でご紹介した、ワクチン接種も人獣共通感染症の感染防止に重要となります。

人への感染予防

飼い主さんにとっては寂しい予防策となりますが、ペットとの過剰なふれあい(キスや食べ物の口移し等)を控えることが感染リスク低減の最も有効な手段です。また、直接接触感染を防ぐため、噛まないようにしつける、ペットの爪を短くしておくなども大切です。

 最後に

感染症に対する予防はご自宅のペットはもちろんの事、他のお家のペットや動物、人間に病気を感染させないという意味でもとても重要なことです。
今回はワクチンや感染症について紹介しましたが、日々の生活で小さな異常を見つける事も健康管理として大切です。ペットのことを一番理解している飼い主さんにしかわからないことも多くありますので、普段からよく観察をし、飼い主として正しい知識を持って、ペットの健康管理を行いましょう。

 

参考文献

・山根義久 .イヌ・ネコ 家庭動物の医学大百科 改訂版 .パイ インターナショナル/図書印刷株式会社 ,2012
・東海林克彦 .犬と猫との暮らしの教科書 .公益社団法人日本愛玩動物協会 ,2019
・東海林克彦 .愛玩動物飼養管理士<2級 第2巻> 2021年度<第41期> .公益社団法人日本愛玩動物協会 ,2021
・武藤修一 .アニマルサイエンスシリーズ ライフステージからみた犬と猫の健康管理 .TBS出版株式会社 ,2008
・環境省自然環境局総務課動物愛護管理室 .”人と動物の共通感染症に関するガイドライン” .環境省 .平成19年 .
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/infection/guideline.pdf ,(参照 2023-2-8)

 

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