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暮らしと健康
獣医師執筆記事

動物介在活動~現場でのお話~

もうすっかり冬の日々ですね。朝百舌鳥が鳴いている白い空を見ると冬を実感します。近くの釣り堀ではそろそろマスを放流して冬のマス釣りが始まるそうです。
前回は動物介在活動の概要についてお話しました。今回は実際の現場でのエピソードなどを交えてお伝えしたいと思います。

CAPP活動について

 私が初めてCAPP活動に参加したのは学生の頃でした。当時JAHA(公社日本動物病院協会)には学生会員があり、獣医学科の学生時代から動物介在活動を体験できたことはとても貴重な体験でした。
活動は高齢者施設への訪問が主で、普段は自身で手を動かさないので食事のリハビリが難しい方なども参加されていました。


活動の効果を一番敏感に感じ取ってくださるのが施設の職員、スタッフの方々で、参加した施設利用者さん皆様の動作、表情など、初めてお会いする私たちにはわからない微妙な変化にも気づかれます。
活動の後には必ず施設の皆様も含めてボランティアの皆様と参加動物のケアをしてから、振り返りミーティングをします。その時に、「今日ご参加の○○さんは普段は見られない笑顔がとても多かった」、「▲▲さんはあんなに手を動かすことができたとは・・今まではあの動きを引き出せなかった。」、「犬や猫に触りたいという気持ちが自発的な動きで見られるというのが素晴らしかった。これからはお食事をご自身で食べていただくリハビリに力をいれてみたい。」というような大変嬉しいフィードバックをいただくこともしばしばでした。
また、2003年に全国に先駆けて始まった聖路加国際病院の小児科病棟の動物介在療法では、様々な病態のお子さんたちが入院を継続されている中で時には辛い治療に耐えかねて心が辛くなり、周囲に当たってしまう、きつい言葉を発してしまうこともあるようでした。その中で動物介在療法を心待ちにしているお子さんたちは、動物に会えた後は治療にも協力的になり、治療の辛さが少しの間でも緩和されるというお話を伺っています。

動物介在教育について

動物介在教育は学校や学童保育の場などで行っています。
やはりこれからの時代、子どもの頃に人も動物も地球環境もどれだけ大切なものであるのか、命の大切さ、動物の暖かさを肌で感じて、心臓の音を実感してもうような体験はとても貴重です。子ども時代に犬と正しく、穏やかに優しく出会うこと、きちんとした挨拶の仕方を学ぶことで生涯のその方の動物への眼差しが変わってくると思います。ファーストコンタクトはとても大切なのです。初めに辛い、怖い出会いをしてしまうとずっと犬は怖いと思ってしまいがちです。子ども時代に人間以外の命を実感し、大切に優しくする対象であるということを体感することは子どもの脳の発育、情緒の豊かな形成に役立つことは科学的にも証明されています。
また、先日はCAPP活動の新型コロナ禍ガイドラインに従い、久々に動物介在教育を港区の港南の学童施設で行ってきました。お子さんの参加人数は限られており、換気や消毒などかなり気を使っての活動となりましたが、肉球ハイタッチ、お子さん自身でリードを持ちハンドラーとダブルリードでの「一緒御散歩」なども大人気で、とても楽しい活動ができました。
今回の活動に限りませんが、最初は犬は少し怖い?と遠巻きにしていたお子さんが、活動終わりには僕は犬と暮らすことにしました!と発言される変化も大変嬉しいエピソードです。

 
最近では前回ご紹介した図書館での読書プログラムも再開されており、お子さんたちがとても楽しみに参加されます。犬たちはお気に入りのラグマットの上で横たわったり伏せをしたりしてリラックスして参加します。もしも読み間違えても犬は指摘をしないため、安心して好きなように読むことができます。
時に読めない漢字があったら、ハンドラーも「その字はきっとデューク(犬の名)もわからないと思うから調べてみよう!」というようなヘルプを出し、解決していきます。とてもワクワクする活動の一つですね。

参加している動物は幸せなのか?

 皆さんから参加している動物は幸せなのか?という質問を受けることがあります。
この活動では動物の適性をとても尊重しています。人に個性があるように、動物たちにも個性があります。参加するのは伴侶動物たちだけであること、また、人が好きで家族との強い信頼関係があり、他の動物や様々な環境に強い関心を寄せない、落ち着いた安定した精神を持つといった「適性」は大切です。そうした動物たちと家族が参加をしています。活動中、参加動物たちはプロ意識を持っているかのように素晴らしい活躍をしてくれます。
自身の愛する犬や猫と共に社会奉仕活動ができる代え難い喜びに目覚めた多くの方々と素晴らしい伴侶動物に支えられている活動です。ボランティアさんとして活躍することでこの気持ちを感じることができます。私もこれからも参加を続けていきます。この活動はすでに伴侶動物と別れた方々も参加することができます。
※もちろん野生動物はその環境のままに・・・がとても大切です。

公社日本動物病院協会HP

最後に

伴侶動物との暮らしは人間に優しさを届け、そのぬくもりに遺伝子の記憶を呼び覚まされる素晴らしいものだと思います。人と動物と地球環境の健全は切っても切り離せないものであることは太古の昔から何も変わっていないのですが、そのことに改めて向き合い、深めていかなくてはいけない時代が到来しています。
次回は最終回、ワンヘルス、ワンウェルフェアについてお話しし、私の1年間のお話のエンディングとしたいと思います。

そういえば私もヒューペルの色々な記事を読ませていただいています。様々な意見があると思いますが、これからの地球環境を考える中で昆虫食の必要性についての記事を先日読ませていただいて、犬のトリーツを試してみました。うちの犬は大好きでした。


柴内晶子先生が執筆された
人と動物の絆~Human Animal Bond~ 記事一覧はこちらから

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