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動物のご飯としても大活躍!昆虫食のBSFLってどんな虫?

近年、全世界でSDGsに対する意識が高まっており、その中でも持続可能な次世代のタンパク質源として世界的に注目されている昆虫食。
海外では昆虫がペットフードや飼料の原材料として使用されるなど、その存在は人だけでなくペットにも身近な存在となりつつあります。

そんな食用として注目されている昆虫にはミルワームやコオロギ、イナゴなど様々な種類がありますが、今回はヨーロッパを中心に活躍している昆虫の一つ「Black Soldier Fly Larvae」についてご紹介いたします。
(昆虫食が広まった背景についてさらに詳しく知りたい方はコチラ

 Black Soldier Fly Larvaeとは?


Black Soldier Fly Larvae(学名:Hermetia illucens)とは、ブラックソルジャーフライの幼虫のことを指し、日本名ではアメリカミズアブの幼虫のことを指します。海外では英語の頭文字を取って「BSFL」という呼称で呼ばれています。
ハエ目ミズアブ科に分類されるBSFLの原産地はアメリカの温帯・熱帯地域で、干ばつや食料不足、酸素が少ない地域といった厳しい環境条件にも適応できる種とも言われています。1)

そんなBSFLの見た目は少しくすんだ白色の芋虫のようですが、成長するとまさにブラックソルジャーという名の通り、黒い兵士のようなスタイリッシュな体型へと変化します。

【BSFLのライフサイクル】2)3)

一般的にペットフードや飼料の原材料として使用される際は、幼虫の方が可食部分が多く簡単に乾燥させることができる1) などの理由から、成虫ではなく幼虫を粉末化したものが使用されています。

 

 BSFLが注目されている2つの理由


持続可能なタンパク質源として注目されているBSFLですが、その注目されている理由として主に栄養面や環境面での特徴があります。

栄養素を豊富に含んでいる!

BSFLは鶏や牛などの畜産動物と比べて、100gあたりのタンパク質量が高いだけでなく、オメガ6脂肪酸やオメガ9脂肪酸、カルシウム、アミノ酸といった様々な栄養素を含有しています。
特にコオロギやミルワームといった他の昆虫と比較してカルシウムやラウリン酸、マンガンの含有量が高いこともBSFLが注目されている理由の1つです。1)

BSFLを構成する主な成分

・オメガ6脂肪酸:ヒトを含め動物が体内で合成できない必須脂肪酸。そのため、食事から摂取する必要がある。4)
・ラウリン酸:ココナッツオイルなどに多く含まれる中鎖飽和脂肪酸の一種。5)

・カルシウム:歯や骨をつくるだけでなく、筋肉の収縮や神経伝達に関わる栄養成分。6)

・リン:骨を構成するだけでなく、核酸の合成やエネルギー代謝などに関与している。7)

・亜鉛:脂肪、タンパク質、核酸の合成と代謝に関与している。8)

・マンガン:穀類や豆類などの植物性食品に多く含まれる、骨の構成や皮膚代謝などに関与している。7)

環境にやさしくサスティナブル!

BSFLをはじめとする昆虫は、畜産動物と比較して1kgのタンパク質を得るために必要な水や土地が少なく、排出される温室効果ガスの量も少ないことから、環境にやさしくサスティナブルな原材料として注目されています。2)3)

さらにBSFLを育てるために与えられるご飯には、人用食品の原料を加工する際に発生する副産物※1が使用されています。BSFLは幅広い種類のものを食べることができ、またそれらの副産物を完全にアップサイクルすることでフードロスや食品廃棄物問題に対する課題解決にも貢献しているのです。1)9)

【BSFLのアップサイクルの図】1)9)

BSFLは摂取する食べ物の種類によって個体の生存率や窒素などの一部の栄養素の組成が大きく変化することがなく、原料として安定した供給ができることも注目されている理由の1つです。10)

 

 BSFLって安全なの?


昆虫と聞くと、人への安全性や何か病気を運んだりする心配はないの?と気になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、BSFLは様々な法律や規制により、その育成から加工に至るまで厳しく管理がされています。

動物用飼料や畜産動物と同じ法律が適用されている

BSFLの主な製造国であるヨーロッパやアメリカでは、昆虫が摂取する食べ物から昆虫が製品化されるまで様々な法律により規制されています。
・ヨーロッパの場合
ヨーロッパの法律では、養殖された昆虫は家畜とみなされており、畜産動物に適用される基準のほとんどが昆虫にも適用されています。そのため昆虫をペットフードや飼料の原材料として使用する場合は、食品と飼料の安全性について定められた「一般食品法※2」などの法律に準拠する必要があります。11)
・アメリカの場合
アメリカではペットフードや飼料の原材料としてある素材を使用する場合、厳しい審査を経てAAFCO※3の認可を取得する必要があります。
BSFLも例にも漏れずその審査を通過しており、犬にとって問題のない原材料だと認められています。12)さらに、BSFLの製造管理に関してもFSMA※4による規制がされています。13)

病気を媒介しない

上記の法律を基にBSFLの飼育環境は完全室内の密閉空間で育成されているため、野生生物種と接触することはありません。14)
さらに、同じ施設で飼育されているBSFLの親元となる成虫は他の種類のアブとは異なり、水しか飲むことができず人を嚙んだり刺したりすることはないため、病気を媒介する恐れがないとされています。10)

 

 最後に


日本ではまだまだマイナーな食材であるBSFL。
現在は主に海外においてペットフードや飼料の原材料として活躍していますが、今後はもっと身近な存在になるかもしれません。
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<注釈>

※1 副産物
果物の皮や野菜のヘタなど、食品を加工する際にやむを得ず捨ててしまう部分であり、売れ残りや食べ残しなどの廃棄物ではございません。
※2 一般食品法
ヨーロッパではEU加盟国に対しEU法(EU Regulation)という法律が適用されています。一般食品法(General Food Law Regulation)とは、EU法のうち農場における動物の健康問題から消費者の食卓に届けられる食品に至る全てのフード・チェーンに関わる規則のこと(規則(EC)No 178/2002)を指します。14)15)
※3 AAFCO
米国飼料検査官協会(The Association of American Feed Control Officials)の略称であり、アメリカの非営利団体のことを指します。動物用飼料やペットフードの原材料および栄養基準などを定めています。犬や猫の総合栄養食の栄養基準に関しては日本のペットフード公正取引協議会もAAFCOの基準を採用しています。16)17)
※4 FSMA
米国食品安全強化法(Food Safety Modernization Act)の略称で、米国内で製造される食品だけでなく、米国内で流通する輸出食品にも適用される食品安全に関する法律を指します。15)

<参考文献>
    1. Harinder P. S. Makkar et al. State-of-the-art on use of insects as animal feed. 2014.
    2. Arnold van Huis et al. Edible insects: Future prospects for food and feed security. FAO forestry paper 171. 2013.
    3. Keya Mukherjee et al. Looking at edible insects from a food safety perspective. FAO. 2021.
    4. 菅野道廣 et al. 必須脂肪酸. 油化学. 1991; 40(10): 831-837.
    5. 丸山道生. 各種脂肪酸乳剤の特徴と代謝. 外科と代謝. 2017; 51(2): 63-72.
    6. 農林水産省. 大切な栄養素カルシウム. Available from:
      https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics1_05.html
      [Accessed 11th July 2022]
    7. 日本人の食事摂取基準(2020年度版). 厚生労働省. 2019; 322-326.
    8. 飛田邦之. イヌの亜鉛欠乏. ペット栄養会誌. 2001; 4(1): 43-44.
    9. Fact Sheet 6-Connecting-local-agricultural-supply-chains. IPIFF
      Contribution Paper on Frass.
    10. Yu-Shiang W. et al. Review of Black Soldier Fly(Hermetia illucens) as Animal Feed and Human Food. Foods 2017; 6(91): 1-23.
    11. A glimpse of a modern insect farm. IPIFF.
    12. Ingredient Definitions Committee Report Midyear Meeting via Webinar. AAFCO. 2021; 4: 1-11.
    13. FEDERAL REGISTER. Current Good Manufacturing Practice, Hazard
      Analysis, and Risk-Based Preventive Controls for Food for Animals.
      Available from:
      https://www.federalregister.gov/documents/2015/09/17/2015-21921/current-good-manufacturing-practice-hazard-analysis-and-risk-based-preventive-controls-for-food-for [Accessed 11th July 2022].
    14. General Food Law. Available from:
      https://food.ec.europa.eu/horizontal-topics/general-food-law_en [Accessed 11th July 2022].
    15. 第1編 EUにおける食品安全行政. Available from:
      https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=cho20040300012&fileId=01-005 [Accessed 13th July 2022].
    16. AAFCO. Welcome to AAFCO. Available from:
      https://www.aafco.org/  [Accessed 11th July 2022]
    17. ペットフード公正取引協議会. ペットフードの表示について. Available from: https://pffta.org/hyouji/about.html [Accessed 11th July 2022].
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