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暮らしと健康
獣医師執筆記事

ペットロスを癒す「虹の橋」の詩

虹の橋の物語がいつのころからか詠み人知らずの詩として語り継がれています。
私も伴侶動物の家族としてこの詩を読む度、胸が熱くなります。あの日別れたあの子にまた会える!と思うことはその想像だけでも人を鼓舞するような気がします。
私達も日々伴侶動物医療の中で患者さんの旅立ちを看取ることもあり、私達自身の家族である動物達を見送ることもあります。
お別れの形は様々あって、家族毎にそれぞれ異なります。
人でもそうであるように、伴侶動物達も深く愛情を傾けて日々を費やしていても若くして重い病気になってしまうこともあれば、空気の様に毎日を紡いでいく中で気づいたらもう19歳?というようなご家族もいます。

伴侶動物と向き合うということ

伴侶動物医療の形はこの数十年で大変進歩し、求めれば様々な高度医療も受けられる体制が出来上がってきています。またCOVID-19の蔓延に伴い、専門科の学びのために数多いウィビナーも催され、学びの場も多彩になっています。
私の両親の世代、日本で伴侶動物の獣医学を学ぼうとするとそのためのリソースがなく、情報を得る方法すらも限られていた時代とは大きな違いです。その分、伴侶動物の平均寿命も一桁台から犬は約14歳、猫は約15歳ととても長く延びています。
それだけに、もしも伴侶動物が病気になったらどのような選択をしていくべきなのかが問われる時代でもあると思います。

伴侶動物は永遠の5歳児ということを時としてお話しますが、いつまでも共に暮らし、独立せず、その姿は年をとっても愛らしく、しかし言葉でのコミュニケーションは難しい。
心は通じ合っている分、もどかしい瞬間もあるかもしれません。
私達も現場で治療の選択での難しい岐路に立ったとき、ご家族とよくお話をします。ご家族もご自身の希望や心の中に向き合うことになり、つらい瞬間もありますが、しっかり向き合われたご家族ほど心安らかに旅立ちを迎えられるように思います。
伴侶動物の寿命は日本人の平均寿命の1/5ほどかもしれません。
私たちはそれをわかっていて一緒に暮らしています。通常ならば動物が先に旅立ちます。存在を手放すのは本当に大変ですが、上手に手放すことも深い愛情の一つのように思います。
伴侶動物は私達人間の傍らでしか生きる場所のない動物です。人との暮らしを太古の時代に自ら選び取った特別な生き物種なのです。
それを思うといつも私は自身の中で結論し、私自身が生ける限りは1頭でも少しでも幸せに伴侶動物と暮らそうと思うのです。

私には子ども時代に沢山の勇気を与えてくれた犬と猫がいます。

ポン太郎(昭和39年生まれヤッパーボーイオブタックタックス(同年生まれ)

2頭は今も私の心の支えであり、伴侶動物医療を続けて行く理由の一つにもなっていると思います。(もちろん今一緒にいる子達もこの上なく可愛いです)
皆さんも心の中に大切な子がいるのではないでしょうか?

虹の橋コーナー


当院の待合室スペースの明るい一隅に「虹の橋」コーナーがあります。
そのコーナーでは、いただいた沢山のカードやアクリル記念碑、お手紙をオープンにしています。頑張って共に生きて旅立っていった可愛い子達の思い出とご家族の思いがこもっているのです。
このメッセージもまた、私達伴侶動物医療者の何が起こるかわからない日々の心の糧、支えにもなっていると信じています。

良い日々を送り、広い瞳で育み、信愛を持って暮らし、愛情をもってお見送り、旅立ちをさせ、やがて虹の橋のたもとで再会したいですね。

 

「虹の橋」の詩

(詠み人知らず)
天国の入り口の少し手前に「虹の橋」と呼ばれる場所がある
私達の大切な伴侶:動物達はこの世から旅立った後にこの虹の橋に行くという
そこは緑溢れ、食べ物も水もふんだんにあり、皆共に遊び走りまわる
緑豊かで陽光に溢れ、心地よく楽しく暮らす日々
怪我や病気もすっかり治り、私達が夢の中で彼らに出会うときの姿のように
若い姿に戻り元気を取り戻して楽しく暮らしている

動物達はそこではただ一つを除いて毎日幸せで満ち足りている
ただ一つとは、そこにあなたがいないこと……

瞬間、群れの中の1頭が急に立ち止まり、遠くを見つめる
その瞳は輝き始め、希望と喜びに満ちて身体が震え出す
仲間の群れの中から飛び出し、緑の草原の上を跳ぶように駆けていく
駆けて、駆けて、
そして、あなたの元へ……

あなたと大切な伴侶は虹の橋のたもとで再び出会う
二度と離れることのないように
強く抱きしめ合い
あなたの顔に降り注ぐ幸福の万のキス
あなたは両手で愛しい子の頭を幾度も撫でる

信頼にあふれるわが子の瞳をもう一度のぞき込み、
人生から長い間失われていたけれど1日も消えることなく
心に焼き付いていたその瞳をのぞき込む
あなたと伴侶動物は共に虹の橋を渡り
天国へと赴く
もう2度と離れることはない

 


柴内晶子先生が執筆された
人と動物の絆~Human Animal Bond~ 記事一覧はこちらから

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