ペットフードに関する法令 ~日本と米国の違い~
大切なワンちゃんネコちゃんが食べるもの、その製造方法や原料などについて、そしてその法律についてどのくらい知っていますか?
近年、ペットは大切な家族の一員という考え方が広がり定着してきていますよね。
そんな大切な家族が食べるもの。
なにが使われているか、どこで作られているか、本当に安全なものか…言葉を話せない相手だからこそ、私たちがしっかりと見てあげたい部分です。
今回は、日本で定められているペットフードに関する法令、そして動物愛護においてペット先進国といわれている米国で定められているペットフードに関する法令についてご紹介します。
日本のペットフードに関する法令
2007(平成19)年3月、米国においてメラミンが混入したペットフードが原因で、多数の犬や猫に健康被害が発生しました。
このメラミン混入の恐れがあるペットフードは日本にも輸入、販売されていたことが判明し、販売業者による自主回収が行われました。
このような危機と隣り合わせの状況と、これまでペットフードの安全を確保するための法律が日本になかったことなどから、農林水産省と環境省の共管で「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」が2009(平成21)年6月1日から施行されました。
これが通称「ペットフード安全法」とよばれるものです。
つい最近まで、どのようなペットフードを販売しても罰せられず、基準がなくどのような原料を使っても問題がなかったと考えると、とても恐ろしいですよね。
法律と規制の内容
この法律は、愛がん動物(犬や猫)用につくられる飼料の安全性の確保を図ることによって、愛がん動物の健康を守り動物の愛護に寄与することを目的としています(法第1条)。
ただ、愛がん動物として対象とされているのは犬と猫のみです。今後、近年人気が出ているエキゾチックアニマルなども対象となるといいなと陰ながら思っています。
飼料とは、総合栄養食や一般食、おやつ、サプリメントなどの“栄養”として使われるものに適用されますが、同じく犬と猫に与えられるものでも、動物用“医薬品”等とされるものはまた別の法律があり対象外です。
ペットフード安全法では、犬や猫にとって毒である様々な物質の成分規格や製造方法の基準、表示の基準などが定められており、これらの基準を満たしていないものは販売してはいけないとされています。
企業は製造や輸入に関する届出や帳簿の備え付けが義務付けられており、関係職員や独立行政法人農林水産消費安全技術センターによる立ち入り検査の実施も必要に応じて行われます。
犬や猫のペットフードやおやつ、サプリメントなどを販売している日本の企業は、この法律に則って製造や輸入、販売を行っているのです。
また、この他により飼い主とペットへ安心できるものを届けられるよう、ペットフード公正取引協議会が消費者庁及び公正取引委員会の承認の下に作成している規約も存在しています。
米国のペットフードに関する法令
では、ペット先進国といわれている米国ではペットフードに関してどのような法令があるのでしょうか?
米国では“ペットフード”に限定した法令ではなく、人とペットを含む動物の両方の“食品”を対象とした、「食品安全強化法」(Food Safety Modernization Act:FSMA)が2011年1月に成立しました。そこから米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の権限強化が図られ、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の考え方を基盤とする衛生管理が義務化されたのです。
HACCP(ハサップ)とは?
食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を把握し、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。日本でも2020年6月より人の食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理を行うことが義務化されました。
法律と規制の内容
ペットフードやペット用サプリメントなどを販売するためには、FDA、AAFCO(The Association of American Feed Control Officials)による様々な評価や規制があります。
主な内容としては、
・原材料の認可
・ラベル表示の規制
・食品製造施設のFDA登録
・US Agent(米国代理人)の指名
・製品を販売する州への製品登録
・宣伝文言の誇大表示の禁止
などがあります。
原材料の認可は、FDAによるGRAS(Generally Recognized as Safe)通知とAFFCOの栄養基準により、原材料の安全性を評価します。
AAFCOが定めたペットフードの栄養基準は世界的なスタンダードとなっており、日本のペットフード公正取引協議会もこの栄養基準を採用しています。
また、製造に関してはFASMAにおいて規制が定められています。
「FDA PC規制」では、米国で消費される動物向け食品を製造/加工、梱包、保管する施設は、危害分析およびリスクに基づく予防管理(Hazard Analysis and Risk Based Preventive Controls)として、食品安全計画の策定と実施が義務付けられています(第507条)。
また、「FDA FSVP」では米国の輸入業者に対し、外国供給業者検証プログラム(Foreign Supplier Verification Program:FSVP)として、輸入食品に対する安全検証活動に応える義務もあります(第301条)。
まとめ:日本と米国の違い
日本と米国には、それぞれペットフードを製造、輸入、販売する際に遵守しなければならない法律が存在しています。
2つの国の大きな違いとしては、日本は“犬及び猫”が食するものに対する法律であることに対し、米国では“食品”というくくりでペットフードも人同様の基準の法律が定められていることです。
この違いが今後日本でどのように進んでいくのか、その動向も含めて私たちヒューペルは勉強し続けていきたいと思います。
ただし、法律が定められていてもすべてが安全と確証できるものではありません。
法令通りに製造、販売を行っていても、思わぬところで有害物質が含まれたりと、健康被害に繋がってしまう場合もあります。
今回紹介した品質管理をしっかりと行っている米国でも昨年末、ドッグフードにカビ毒が混入してしまい健康被害が出て製品回収になったという悲しいニュースがありました。(記事はこちらから)
私たちにとって大切な存在であるペットとより長く元気に暮らすうえで、ペット業界の法令が整いペットに対する意識や考え方が変わって行くことはもちろん重要なことですが、私たち飼い主がよく考え寄り添い続けることが大切なことだと思います。
今回は、現在検討している新しい商品を販売する準備の中で学んだ海外との違いを「ペットフードに関する法令」の観点から記事にてご紹介しました。
米国にいるスタッフとweb会議をしていると、今回の内容以外にも日本と米国の違いを感じることが多々あり、いつも勉強になります。
ヒューペルは、日本だけでなく海外にも目を向けてより良い商品や情報を皆さまにお届けし、ワンちゃんネコちゃんの毎日の健康と飼い主さんとの笑顔あふれる生活に貢献したいという想いを持ち続け、これからも活動していきます。