犬や猫もデンタルケアが大切!~歯周病について~
歯周病は、ペットの口腔内の疾患で最も多いと言われています。
歯周病をはじめとした犬猫の口腔内で発生する様々なトラブルについて紹介している記事もあるので、ぜひそちらもご覧ください。
⇒口臭大丈夫?犬猫のお口のトラブル
歯周病を放置するとどうなるの?予防のためにできることは?
この記事では、ワンちゃんネコちゃんの歯周病についてご紹介させていただきます。
歯周病について
歯周病は2歳齢以上の犬猫の80%以上に発生がみられ 、この数値の高さから口腔内の疾患で最も発症率が高い病気と言われています。歯周病は、病気の進行度合により歯肉炎と歯周炎に分けられます。
歯肉炎とは、歯周病の初期に発生する状態のことです。歯肉炎が進行すると病変は歯肉にとどまらず、歯槽骨(*歯を支える骨のこと)の吸収が起こり、歯周炎と呼ばれる状態になります。
歯周炎まで進行してしまうと治療が困難になり、治療するには動物病院で麻酔をかけて手術する場合もあるそうです。
歯周病にかかると、以下の症状がみられるそうです。
・歯肉が腫れている
・歯が汚れている
・ご飯が食べずらそう
・口臭が気になる
もしあなたのワンちゃんネコちゃんでもこのような症状が見られたら、まずは動物病院の受診をおすすめいたします。
歯周病の原因
歯周病の原因と聞くと、フードやおやつが歯の隙間に残った食べかすだと思う方が多いかもしれませんが、実はそうではありません。食べかすのほとんどは唾液などによる自浄作用で除去されますが、時間の経過とともに食べかすに細菌と菌の代謝物が付着したもの「歯垢」が歯周病の主な原因とされています。多くの場合、食べかすに付着した細菌は唾液で流れていきますが、歯と歯茎の間や奥歯などは唾液が行き渡りにくく、歯垢がたまりやすいと言われています。
また、歯垢はわずか1週間(人の4~5倍の速度)で石灰化して「歯石」に変化してしまいます。石灰化した歯石の表面はザラザラでさらに歯垢が付着し、歯石はだんだんと厚さや広さが増加し、歯周病が悪化してしまいます。
歯石は万病のもととも考えられています。歯周病を放置すると歯周病に関連する口腔内細菌が歯周ポケットを通して全身に回ってしまい、他の疾患を招く恐れもあるそうです。
犬と猫の違い
・犬
一般的に、大型犬より小型犬の方が歯周病にかかりやすいと言われています。その理由は、小型犬は顎が小さい分、隣同士の歯の隙間が小さく、口腔内に充分な唾液が行き渡りにくいためとされています。
・猫
犬と比べて口腔内が狭く歯も小さいため、歯周病の症状に気づきにくい場合が多く、知らない間に症状が悪化しているケースもあるそうです。
このように犬や猫にとって身近な病気である歯周病、実は犬猫同士あるいは犬猫と人の間でうつってしまう「人獣共通感染症」とも言われています。
愛犬愛猫が可愛すぎて口移しでご飯をあげたり、キスをしてしまう飼い主さんもいるかと思いますが、これらの行為は感染症の観点からお勧めできない愛情表現なのです。
また、多頭飼いの飼い主さんは犬猫同士が同じ食器を使わないようにする、などの注意が必要かもしれません。
予防するには
口腔内の疾患には予防できるものと予防できないものがありますが、歯周病は予防できる疾患の一つです。したがって、歯石が形成されないうちに歯磨きを基本とした家庭でのケアが重要とされています。
しかし、歯磨きが苦手なワンちゃんネコちゃんも多いですよね。最近は、数多くの歯垢・歯石が付着しにくいフードやおやつ、ケア用品が販売されているため、これらを歯磨きと併用することも効果的とされています。
最後に
人では「満80歳で自分の歯を20本以上守ることを目指した8020運動」が推奨されていますが、ワンちゃんネコちゃんでも生涯を通じて健康な歯を残すことは大切です。
皆さまもこの機会に、歯の健康について考え直してみませんか。
次回は、犬猫の口腔内ケアの実態についてご紹介いたします。
参考文献
藤田桂一、小動物歯科診療の歴史ならびに現状と展望(Ⅱ). 日獣会誌、2005、 58、 p. 298-300
林一彦、補助犬の歯を守る、日本補助犬科学研究、2014、p.2-4
網本昭輝、今さら聞けない歯石除去3. 歯垢・歯石除去、動物臨床医学、2015、p. 57-63
監修:山根義久、イヌ・ネコ 家庭動物の医学大百科 改訂版、パイ インターナショナル/図書印刷株式会社、2012年11月10日
西山謙三他、ヒトと飼いイヌにおける歯垢中の歯周病原菌の検出、神奈川歯学、2021、p. 10-18
犬猫うちの子の大問題. 週刊ダイヤモンド、2021、第109巻、p40-41