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暮らしと健康
獣医師執筆記事

暮らす前カウンセリング~犬や猫と暮らす前に気を付けておきたいチェック項目~

三寒四温といいますが、まさにこのところはそのような日が続いています。
ソメイヨシノ、八重桜、少し色の薄い大島桜など種々様々な桜と木蓮などの木の花がどんどん開花していますが、時に2月に戻ったような花冷えの日もあります。曇り空の桜もまた美しいです。

前回は「暮らす前カウンセリング ~伴侶動物と暮らす前に知ってほしいこと~」というお話をしました。

これは、「伴侶動物との初めての暮らしの前に」とはかぎりません。
伴侶動物と共に「永年暮らした経験のある方」も実は意外と知らないアップデート情報もあるものです。改めてお話を聞いて頂くと新しい発見があるかもしれません。

 

犬や猫との暮らしの前に気を付けるべきチェック項目


✿ライフスタイルと家族を考える
 □昼間働いて夜は帰宅する仕事
 □夜勤もある仕事
 □家族の人数
 □一緒に暮らしている人に高齢者や子どもがいるかどうか

✿家の面積とタイプ
 □床面積
 □集合住宅か一軒家か
 □都会か郊外か

✿伴侶動物に費やせる時間と費用
 □動物に費やせる時間が毎日どのくらいあるか
 □経済的に十分な医療・教育を与えることができるか
 □動物の福祉を護れるかどうか
 □動物の医療に関わる保険などの検討

✿家族に合った種類と品種と性格
 □犬か猫か?
  ⇒犬と猫の習性行動、かかりやすい病気、予防医学、マイクロチップ挿入
   (2022年6月からプロの現場はマイクロチップが義務化され、
    家族としての動物は挿入努力義務となります)
  ⇒犬と暮らそうと思っていても実は猫が合っていることもあるため、
   具体的な事も含めて専門家とのディスカッションがとても有意義です。
   例)犬は2次元的な生活空間、猫はより3次元的な生活空間を想定など
 □品種の選択
  ⇒同じ小型犬でもシーズーはおっとり愛されるのがお仕事、
   プードルは元々水猟犬で活発です。
   ボーダーコリーは牧羊犬なので、多くの運動が必要です。
   保護犬などミックスの子を選択することも楽しい体験ですが、
   品種的な性格という視点から性格などを推測するのはより難しくなります。
   成犬時の大きさも正確には分かりません。
 □生来の性格
  ⇒生来の性格は個体毎に異なります。
   この点については事前に100%わからない部分です。

✿いざという時の備え

 □老若男女問わず、病気や事故、急逝などに備えた動物の預け先
 □周囲の人のフォローを考える
  ⇒家族間、友人間、シッターさんやペットショップ、
   動物病院などもあらかじめ見つけておきましょう。
 □遺言状の作成
  ⇒効力のある遺言状は年齢に関係なく作成しておくと良いですね。
 □信託
  ⇒費用を残すことも重要ですが、一番重要なのは残された動物が
   どのような生活を送るかです。そこまで考えて用意をしましょう。
 □レスキューカードの携帯
  ⇒ひとり暮らしの方が万が一外出先でアクシデントに遭った場合に備えて、
   お財布の中など救出された時に人の目に触れるところに
   「伴侶動物と暮らしているので動物の救出をお願いします」
   と書かれているものを持ちましょう。
 □家族との事前の話合い
 □災害時の避難場所や避難形態の確認
 □動物の食糧,日用品の備蓄
  ⇒意識しておく意味で動物用非常袋などを用意しておくと良いですね。
 □犬も猫もクレートトレーニング!

 


 

クレートトレーニングについて

クレートとは一般的にキャリーケースというと分かり易いと思います。(主としてプラスチック性で動物を護れるキャリーケースを指す事が多いですが、布製などの場合はソフトクレートとも呼ばれます。)
犬も猫も共通にクレートやケージの中でおとなしく過ごせるように習慣化する事は最重要なしつけの1つです。
犬も猫も日常的に安心出来る場所としてクレートがあれば、通院の時も外出の時もいざという避難の時もストレスがかかりません。特に避難時はこのクレートトレーニングが出来ているかどうかが共に避難できるかどうかの分かれ道になる可能性もあります。
クレートは使ったらしまわずに、常にリビングなど生活圏に出しておき、その中で食事を与えたり、ご褒美をあげるなどをして、大好きな安心出来る場所にすることが大切です。近年では、猫も犬もクレートに喜んで入り、移動もストレスなく、苦痛なく、怖さなく、動物病院でも嫌な思いをできるだけしないで済むようにしていこうという動きが活発になってきています。

最後に

こうして伴侶動物と暮らす事への様々な配慮、心構えを沢山お伝えしておきながら最後に少し反する事をお伝えするようですが、動物との出会いも御縁のとりなすもの。「完璧」を求めすぎない事も大切ではないかと思います。
伴侶動物の家族としてベテランになった方々は共に暮らす動物に少し何かのハンデがあっても、保護の動物なども含めて「これも御縁だね。うちに来てみる?」という気持ちで共に暮らしだす形があっても良いかとも思います。後肢麻痺を持っているけれど、とても愛くるしい猫ちゃんの譲渡や足に問題を抱えた大型の譲渡なども今までに数件ありました。本当に有り難いお申し出です。
そして、その動物の存在がご家族にとっての心の支えや生きがいになっています。
伴侶動物には帰る自然はありません。私達の側にしか居場所のない存在です。私達の手で1頭でも幸せにすることがすべての伴侶動物の幸せではないかと思います。

 


柴内晶子先生が執筆された
人と動物の絆~Human Animal Bond~ 記事一覧はこちらから

 

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